第7回。本日は「イネ」のお話です。
ゲストは国立遺伝学研究所副所長倉田のり教授にお越し頂きました。

「天井を突き破りそうに背の高いイネもあるんですよ」
「!」
「竹のように乾燥した土地に生えるイネもあります」
「!!」
「米が実った途端に地面に落ちるものもあります」
「!!?」
「米も一種のタネですからね(笑)。」
私たちが、日常目にする田園風景は、どうやらヒトが食べるために改良を加えたイネであって、野生のイネはかなりワイルドなようです。
さて、一体今日はどんなお話が飛び出すのでしょうか!
◎どうしてムギじゃなくてイネの研究を?
日本人ならやっぱりパンよりお米でしょ(笑)。それは冗談にしても。やはりイネは私たちの生活にとても密接であるということが言えるでしょう。そして、何よりイネというのは染色体がとても小さく、ゲノム解読がしやすいんです。全ての穀類の元になるのが、このイネと言っても良いと思います。ですから、イネの遺伝子を突き詰めて研究していくと、同時にムギの性質についても解ることが増えてくるんですよ。
◎イネとムギには遺伝子的にはどんな違いがあるんですか。
一番の違いは、染色体の大きさ、だと思います。イネの遺伝子がアリンコくらいだとすると、ムギのそれはイモムシくらいあるんです。かなりの大きさの差でしょう。しかし、実際のムギとイネ。見た目上は大きな差はないですよね。染色体が大きいほどその体が複雑な作りをしているかというと、それは違うんです。染色体は代を重ねるごとにその情報がコピーされていくのでそれでムクムクと大きくなったのが、ムギ、と言えるでしょう。
◎遺伝子組換えの食品て、実際は安心なんですか?
そうですね。一般的に「遺伝子を組換えた」と聞けば、なんとなく怖いイメージが湧くかもしれませんが、食品の遺伝子組換えに使われる遺伝子は、実際に自然界で他の植物が作っているものであって、それを組み込んだからといって悪影響があるとは考えにくいと思います。私たち科学者は、その安全性をしっかり確かめて、それが一般のみなさんにも理解しやすい形でお知らせしていくことが、必要になってきますね。
◎実りの多い植物を増やせば、人口爆発による食糧難にも立ち向かえるかもしれませんね?
うーん。確かに、収穫量の多い品種を改良して行けば食料の増産も考えられますね。ただし、自然界のバランスですとか、社会構造上の問題も併せて考え出すとその問題は非常に複雑で、一概に「はい」とは言いがたいところがあります。ただ、害虫に強いイネというのは編み出すことは可能です。これまでのイネの改良は、どうしても「味」にこだわっていて、それ以外の野生のイネの性質を落としてきていますから、「害虫に強い」という性質をプラスすることで、厳しい環境下でも育つ強いイネというのは改良していけると思います。
◎動物ではなく、もの言わぬ植物の研究をする面白さは?
植物というのは、動物と比べて非常に単純なつくりをしています。節を積み重ねて成る植物の茎や、葉の構造を見てもそれは明らかですね。しかし。この単純さが「タフ」さに繋がっています。色々な環境の変化に対して融通のきく、フレキシブルなところがあるんです。そういうところは、ヒトとしても見習いたいところだなぁなんて思ったりもします。人はストレスに弱いですからね(笑)。植物はそういう意味で偉大ですし、面白いところでありますね。
◎先生はどんな子供だったんですか?
私は、とにかくボーっとしていました(笑)。小学校の低学年より前の記憶がありません(笑)。この世界は個性的な先生方が多いですが、わたしについてはこんな感じです。色々な人が色々な角度から物事を研究していくと、ユニークな結果が出て面白いんですよね。
◎研究のきっかけは?
私は大学院生の時代から植物に興味があったのですが、あのころはまだ研究があまり進んでいない分野でしたので、まさかこんなにも早くゲノム解読されると思っていませんでした。分子生物学、とりわけ植物に関しては、日本ではほとんど研究機関もありませんでしたので、大学院を出てからの10年間は、動物の研究をしていました。巡り巡って、イネゲノムの研究に入った、という感じです。
◎夢はありますか?
野生のイネの性質を全部調べて、それが、いつ、どういう風に、何が原因で分化してきたのかを研究していくことで、これから先、未来に役立てていけたらと思っています。過去に学び、未来に生かす、といったところでしょうか。
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倉田先生、ありがとうございました。
私たちの生活にとても身近なイネの話題でした。私たちが日ごろ目にする田園風景は、実は人の研究、改良の賜物だったのですね。驚きでした。遺伝の分野の研究がこれからもっと進み、未来を明るく照らしてくれますように!
以上、花村湖子でしたっ!
