第11回 遺伝研サイエンスアワー。
今回はハエちゃんのお話。
ゲストは国立遺伝学研究所 無脊椎動物遺伝研究室の上田龍教授でした。
「今日はね、連れてきましたよ。」
「え゛。ま゛さ゛か゛。」
ついに来てしまいました。実験用の動物君。タマゴさん、幼虫さん、サナギさん、成虫さん。スタジオに勢ぞろいしたのはショウジョウバエさんのファミリーでした。
「キレイなもんですよ。英語でフルーツフライと言って、果物の酵素なんかを好んで集まるハエです。ニクバエやクロバエといったハエが、汚いものにたかるイメージのハエにあたります。」
「ほぇー!」
「遺伝子操作によって体に表れた特徴が名前になることが多いです。これは『カーリー』羽の先が外向きにカールしてるでしょう?」
「うわ。ほんとだ!!カーリー・・・名前可愛い・・・。」
◎ショウジョウバエでどんな研究をしているんですか。
1万5千個のゲノムの働きを調べています。それぞれのゲノムを壊したら、体にどんな変化が現れるのか。先ほどのカーリーは、羽に表れましたね。
◎なぜまた、ハエなんですか。
多細胞生物の中で、一番簡単な遺伝子構造をしているんです。これを詳しく調べることで、ヒトの体についても解ることが増えてきます。
◎ヒトとハエじゃあ大分体に差がありますが大丈夫なんでしょうか。
例えばハエは背中が節々に分かれていますね。これはヒトにもハエにもあるんですよ。アイレス(目が無い)遺伝子を持ったハエは目が無いですし、マウスなら目が小さくなります。ハエはクチクラが異常増殖するとガンができます。マウスも同じで肉腫ができてガンになります。そんなふうで、ハエもマウスも7割は一緒。ヒトも大して変わりません、生物は実に多様で、「そうかと思うと、そうでもない。」そんな不可思議な生き物なんですけれどね。
◎遺伝子を持たない生き物っていますか?
いません。親から遺伝子をもらうから子ができる。遺伝子はいわば、自分を複製していくための手段です。逆に、遺伝子を持つものが生き物である、と言えるんではないでしょうか。
◎ハエを研究する面白さは何ですか。
何と言っても実験でしょうね。形の変わる突然変異体が本当にたくさんあります。ショウジョウバエの見旧字体は100年の歴史がありますが、それでもまだ謎はたくさんあります。そんな不思議をひとつひとつ紐解くことが何よりの面白さではないでしょうか。
◎実験用のハエはどこからやってくるんですか。
主にアメリカ、ヨーロッパです。海外からもらうのが主流になっています。こういった実験用の動物は、それについて論文を書くと、無償で提供するというルールがあります。実際、遺伝研から世界に送ることもありますよ。何でも海外に頼りすぎは良くないと思っているので、今後遺伝研の中でも実験素材を作って生きたいと思います。
◎ちなみにハエはおいくらですか?
たっぷり入って30円(笑)。今は、ハエを入れる試験管代しかもらっていません。アメリカでは1000円、ヨーロッパでは3000円くらいかかるんじゃないでしょうか。うちは国立なのでその辺にゆとりがあります。
◎先生はどんな子供でしたか?
引っ込み思案の目立たない子供だったように思います。自分にとって面白いことは人にも伝えたいという意欲は今も昔も旺盛ですが(笑)。高校時代は生物の勉強はあまり好きではありませんでした。ただ、発生学の『卵はどうして親になるのか』という本に感銘を受けたのが、この世界に足を踏み入れたきっかけだったと思います。
◎こどもたちにメッセージお願いします。
迷ったら、たくさん本を読んでください。悩んでいる時は、実体のない考えに陥りやすい。ぐるぐるしてるのだったら、本を読む。そうすると、かならずその時の自分にしっくりするメッセージに出会え、大きな糧になります。
◎夢はなんですか。
ゲノムの働きをもっと全体的にとらえられるようになることです。多様な情報の全体像をどうしたらもっと簡単に見ることができるだろうということ。そうしたらもっと、研究に幅が出ますよね。
上田先生ありがとうございました。
つまづいたら本を読む。うん、私もそうしてきたかも、と思いました。本の世界にはいろいろな答が転がっています。今の自分にフィットする言葉を見つけられたら幸せ。さあ、読書ライフを始めましょう!それではまた来週☆
花村湖子でした。
